当たり前の経営~指示命令系統の明確化④
阪神を久しぶりにリーグ優勝に導いた星野仙一監督もこのタイプです。
選手の間に入って対話を重ねるなどということは一切いたしません。
それどころか、意識的に選手とは距離を保ち、
指示命令はすべてコーチを通してということ。
食事も絶対に選手とは取らず、ミーティングも全てコーチ任せ、
ある種自己の存在を神格化してしまいました。
私はどちらかというとこのようなタイプの方が
社員もやりやすいのではないかと思っています。
欧米では役員食堂と社員食堂は完全に分かれており、
全く行くところも違います。
私が最初に勤めたホテル業界では、このような特徴が明瞭で、
日本のホテルでは支配人も社員食堂に行って
社員と一緒に団欒しながら食事を摂るという光景は珍しくありませんが、
欧米ホテルでは管理職が食事をするところは
ホテルの一番良いフランス料理の一隅で、昼から贅沢な食事をしています。
社員には絶対近づけない空間です。
ここで幹部連中と食事を摂りながら的確な指示命令を出し、
あとは管理職にすべてを任せるのです。
彼らの頭の中には社員とダイレクトにコミュニケーションを取る、
などという発想は毛頭無いのです。
日本の経営者は
このやり方は日本には馴染まないといって一考もしませんが、
学ぶべき点もあると思います。
単に安心感を求めるために
社員と直接コミュニケーションを取るというのならそれも良いのでしょうが、
①指示命令系統の混乱
②次代を担う中間管理職の育成
という観点は失ってはならないのです。
それは自分で自分の首を絞める結果になります。
それよりもやはり、その時間とエネルギーがあるなら、
外に向けて行動すべきではないでしょうか。
この頃のエピソード
◎ 『わし、もう平社員とは会わん、飯も食わん、星野スタイルで行くんや。
格好ええな、部下と一線を画すというのは』
■ 『社長なんでまた、急に態度変えたとです?』
◎ 『阪神の星野監督の部下操縦術という本を丹念に読んだんや。
彼は直属の部下であるヘッドコーチとのみといろいろ話をして、
後はすべてコーチ任せ。
選手には恐怖感を与えて絶対的な存在となっているんよ、
わしもそうなりたい』
■ 『社長は当社のワンマン社長ですから、そういう存在ですタイ。
それで会社も大きくなりもうした。
バッテン、ワンマン体制では今後上場するにしても組織が持たんから、
部下に権限を委譲し、
もっとオープンな会社組織にしようと思っていたんではなかったとですか?
最近若手と直接話をするようになったのもその一環ではなかっとですか?』
◎ 『そや、今までと違うて少し平社員の言うことも聞いてやろうと思って、
昼時管理職に対する苦情相談会を開いていたんやが、
ちょっと方針を変えて、星野スタイルにしようと思ったんや。
そうじゃないと社員を飛ばすにも情が先に入ってしまってうまくいかんやろ?』
■ 『そらまた180度違いますな。
そのいい加減さがまた社長のいいところですバイ、
それでどないしますの?』
◎ 『もうこれからは取締役としか話はせん!
三喜田、お前のような部長と話をするのも今回限りや、
そう思って早よう取締役にならんといかんよ』
■ 『本当に極端ですバイ、それも何かさびしい話ですバイ』
◎ 『我慢我慢、それが大会社になるためのトラの穴や、
覚悟しとかな、あかんぜ』
■ 『はい、要はわしら中間管理職に権限委譲して任せてくれるんですね。
有難いことですタイ。社長、さすがポイントは抑えてますな』
◎ 『当たり前や、わしはこれから阪神星野スタイルで行くんや、
どや格好ええやろ』
■ 『社長ひとつだけ気ー付けてください、
会社乗っ取られんようにしないといかんですタイ』
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