当たり前の経営~指示命令系統の明確化③
管理職が育たないということで、外部から役員や部長クラスを呼んで来ても、
結果はあまりよくなりません。
一度フラットな組織を構築し、
トップが業務上のコミュニケーションを一般社員と取り出してしまったら、
収拾がつかなくなってしまいます。
経営陣にも迷いがあります。
現場に行かなくてはならない、社員と話をしなくてはならない、
そういったプレッシャーもあり、
良い経営者の一つのモデルが、
オープンで何でも話しを聞いてくれるという理想像を作り上げてしまったので、
自分もそうしなければならないと勘違いしているのです。
しかしそのアプローチの仕方によっては、
自ら育て上げた次代を担うリーダー達を殺してしまうリスクも同時に発生します。
いきなり経営陣が来て、自由な意見を聞かせてくれと言っても
そのような文化が無い会社ではうまくいきません。
また面白いことに現場の声を聞けば聞くほど、
中間管理職を非難する声も大きくなり、
経営トップが管理職に不満を抱くことにもなります。
そうなるとどちらを信じたら良いのか迷いが生じ、
経営がぶれることになるのです。
イトーヨーカドーグループの総師、鈴木敏文氏は
非常にユニークな経営を展開しています。
現場には絶対足を運ばない、データを詳細に分析するだけ。
しかし、この分析に全神経を集中し、
あのような立派に経営の舵取りをしています。
月に何回か支店長会議を開催し、
自分の思いや考えを述べるだけです。
社員との交流とか、双方向のコミュニケーションなどに
気をつかっているとは到底思えないのであります。
この頃のエピソード
◎ 『こら、三喜田。
平社員にいろいろ聞けば聞くほど、おぬしの評判は悪くてかなわん。
若手は皆おぬしの下で働くの嫌がっとるちゅうやないか。
どないするつもりや?』
■ 『社長、わし部下には時に厳しく接することもあるバッテン、
そういわれても仕方ありましぇんが、
しかしそれは一方的な意見であることもわかっちょってください』
◎ 『そうか?それならええけど。
このままでは有望な若手が辞めてしまうんではないけ?』
■ 『若手が辞めるのを恐がって厳しく指導することができなければ
将来わが社にとって本当に役に立つ人材は育たないとです。
社長、ここは心を鬼にして私に任せてくんしゃい?』
◎ 『わしもそうしたいんやが、
今、世間ではオープンでフラットな組織がもてはやされているやろ、
それに社長が自ら平社員と談笑しているシーンが
経済紙に良く載ってるやんか。
そういうのを見るとわしも億劫やがやらないかんなと思うて、
最近職場を歩いては直接話を聞くようにしているし、
週に1回若手と食事会持って意見を聞いとるんよ、
そしたら出るわ出るわ管理職に対する文句ばっかし』
■ 『社長、それは質問の仕方が悪いんではなかとですか?
管理職に対する悪口を煽るような聞き方ではいかんですバイ。
普通はそういった意見は特に社長の前では言いにくいもんですタイ。
そこまで言うのはよっぽどですバイ』
◎ 『ああ、そういえばわしの聞き方も悪かったかも知れんな。
誰にも言わんから不満に思うてること言うてみーと、
ちょっと煽った部分あったがな。
社員の苦情を聞くのが社長の仕事でもあるさかい、
そうしたんやが、拙かったかな?』
■ 『そういう聞き方をすれば否定的な意見しか出てこないバッテン、
もう少し会社を良くする建設的意見というものを
若手独自の視点で聞くようにせなあかんとよ。
何も中間管理職を排除するような聞き方をしていたら、
いずれ部長も課長もいなくなって社長自身が一番困るとよ』
◎ 『そや、最近若手の意見を聞き出だしてから、
わが社の中間管理職を全部放逐しようかとも考えていたんや・・・』
■ 『恐ろしいな、社長、
そんな早まったことしないでちょ!
どうせならわしら管理職にも意見を言う場を与えてくれんとですか?』
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